毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「一人っ子がどんどん増えると……?」とい
う話題について紹介します。
ますます進む少子高齢化。誰が親の介護をするのか?
昨今の日本は“超”が付く少子化時代。今月、厚生労働省が発表した2014年の人口動態統計(確定数)によると、2014年に生まれた新生児は100万3539人。統計が残っている1899年以来過去最小の数値だ。また、1人の女性が生涯に何人の子どもを産むのかを推計した「合計特殊出生率」は1.42で、ハイペースで少子高齢化が進行している。
こうした状況が、社会保障費の増大や労働人口の減少、経済活動の停滞など、深刻な社会問題を招くことは容易に想像される。が、こと“家族”という枠組みで見た場合でも、重要な問題が浮かび上がってくる。それは「誰が親の面倒を見るのか?」という問題だ。
上述の通り、合計特殊出生率が1.42とはどういうことなのか…いささか乱暴な計算だが、もしすべての男女が結婚し、その夫婦すべてが出産すると仮定して考えてみよう。1.42とは、全家庭のうちの半数が2人子供を出産、残り半分の家庭は「産んでも1人」ということ。
そういう家族がどんどん増えていくとどうなるか? 一人っ子と一人っ子が出会い、そして結婚すれば、ゆくゆくは2人(夫婦)が4人(互いの両親)の面倒を見ることになるのだ(もちろん「健在であれば」という条件付きだが)。
夫婦二人で互いの親の介護。だんだんと負担になり…
愛知県に住む70代のAさん夫婦は、まさにそんな家庭に育った2人だった。夫のA男さんは若い頃に兄弟を亡くし、妻のM子さんは一人っ子。お互いの両親は全員90代を超えているが、A男さんの父以外はすべて健在。つまり、夫婦2人が親3人の面倒を見るという構図だ。
お互いの両親の家までは、どちらも片道1時間ぐらいの場所に住んでいたAさん夫婦。ここ数年は両親の年齢が上がって何かと心配が増えたこともあり、平日はM子さんが、土日はA男さんがといった具合に、互いの両親の家を頻繁に訪ねていた。しかし、そういった生活はAさん夫婦にとっても負担になってきていた。
そこでAさん夫婦は、「両親たちが寂しがらず、なおかつ自分たちの負担も減る方法」を考えだした。彼らは、A男さんの母とM子さんの両親を全員同じ施設に入れたのだ。これによってAさん夫婦は両親を訪ねる負担が減少。その一方で、孫たちが祖父母を訪ねる頻度は急増。施設に入った両親たちは、穏やかに暮らしているという。
しかし現実的には、Aさん夫婦のような例は“恵まれた特殊なケース”と言わざるを得ない。A男さんは地元の大企業で役員を勤めた“地元の名士”だったうえ、M子さんの実家は開業医を営む裕福な家系。施設に入る際にもっとも大きな障壁となる経済面での心配をする必要がなかったのだ。
いたずらに一人っ子は大変と考えるのは問題だが、もしAさん夫婦に経済的な余裕がなかったら……。これからの社会情勢を思えば、2人、3人と子どもを生む気になれない心情も理解できる。「2人が4人の面倒を見る」という時代は、すぐそこまでやって来ているのだ。