ケアマネと介護福祉士の賃金、逆転へ 来秋創設の新加算、居宅介護支援は対象外

10年以上の職歴を持つ介護福祉士らの賃上げに向けて来秋に新設する加算について、厚生労働省は22日に開催した審議会で、既存の「処遇改善加算」を取っていることを算定要件に組み込む方針を固めた。自動的に居宅介護支援は対象外となる。ケアマネジャーより高い給料を得るベテラン介護福祉士が生まれていく見通しで、キャリアデザインを改めて描き直す人も増加しそうだ。

ケアマネは蚊帳の外

国が新加算を作るのは来年10月。深刻な人手不足の解消につなげることが目的だ。現場を支え続けている人を優遇するのは、長く頑張っても収入が上がっていかない現状を改めるため。将来の生活をイメージしやすくすることで、新規参入を増やしたり離職を防いだりする狙いがある。

費用は毎年およそ2000億円。8%から10%に上がる消費税と40歳以上の保険料、サービスの自己負担で賄う。厚労省は施策の効果を高めるため、このリソースをベテラン介護福祉士らに集中投入する計画。居宅介護支援や訪問看護を除外するほか、施設でも介護職以外を後回しにする意向を示している。居宅は蚊帳の外に置かれ、施設で恩恵を受けられたとしてもごく僅か − 。ケアマネはそうした状況となる見通しだ。

処遇改善加算で給料近接

厚労省の調査結果によると、月給・常勤で施設に勤めるケアマネの給料(*)は昨年9月で平均34万5820円。月給・常勤の介護職員は施設以外も含めた全体で29万3450円で、両者の差は5万2370円となっている。

* ここでいう給料
基本給+手当+ボーナスなど。いわゆる手取りではなく額面。手当には時間外手当も含まれる。ボーナスなどが出ているところは、4月から9月に支給された総額の6分の1を足している。ケアマネに限り、特養、老健、介護療養病床、グループホームに勤める人のみが対象で、居宅は対象外。

業界の労働組合「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)」の染川郎事務局長は、「ケアマネと介護職の給料は近接してきた」と話す。累次の「処遇改善加算」の拡充が影響したとみられる。

ケアマネ、さらに減少も

勤続10年以上の介護福祉士について平均で月8万円相当の賃上げを行う − 。政府は新加算のインパクトをそう説明してきた。実際の効果はサービスの種類や個々の事業所によって異なるが、月5万円以上のアップでケアマネと同等、あるいはそれ以上の収入を得るベテラン介護福祉士も現れる。居宅のケアマネの中には、施設のケアマネより低い給料で働いている人も少なくないのが実情だ。

国の集計によると、今年度のケアマネ試験(実務研修受講試験)の受験者は全国で4万9312人。13万1560人だった昨年度の37.5%にとどまる激減となった。「ヘルパーなどを除外した受験資格の厳格化が主因」。厚労省はそう解説するが、異なる見方を持つ現場の関係者は多い。求められる役割や仕事・研修の量が増えていること、介護職員との給料の差が小さくなったことなどが背景にあると囁かれている。

ベテラン介護福祉士との給料の逆転が顕在化すると、ケアマネを目指す人が一段と減ったり介護職に戻る人が増えたりする可能性が高い。現下の人手不足の解消に寄与するメリットがある一方で、公正・中立なケアマネジメントの確保やサービスの質の維持・向上の観点で課題が生じる懸念もある。AIの発展・普及の進捗状況とあわせ、今後の動向に大きな注目が集まりそうだ。

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