介護保険はどんな保険?
介護保険は介護が必要な方に、その費用を給付してくれる保険です。
保険ですから、皆で保険料を負担して、必要な方に給付する仕組みになっています。どんな保険でもそうですが、給付を受けるには色々手続きをしなければなりませんし、受けられるかどうかの審査もあります。
制度の運営主体(保険者)は、全国の市町村と東京23区(以下市区町村)で、保険料と税金で運営されています。
サービスを受けるには原則1割の自己負担が必要です。ただし、前年度の所得に応じて、自己負担率が2割あるいは3割になります。
介護保険の基本的なしくみと被保険者(加入者)
介護保険は、被保険者が保険料を納め、介護が必要と認定されたときから介護サービスを利用できる制度です。
介護保険の被保険者は、40歳以上の人で、さらに年齢によって第1号被保険者と第2号被保険者に分けられます。
第1号被保険者
65歳以上の人
第2号被保険者
40歳以上65歳未満の医療保険(健保組合、全国健康保険協会、市町村国保など)の加入者
第1号被保険者は、原因を問わず要支援・要介護状態になった場合、第2号被保険者は末期がんや関節リウマチ等の加齢による次の16種類の「特定疾病」により介護が必要になった場合に限り介護サービスを受けられます。
16種類の特定疾病 |
|
初老期における認知症 |
慢性閉塞性肺疾患 |
脳血管疾患 |
変形性関節症 |
筋萎縮性側索硬化症 |
関節リウマチ |
パーキンソン病関連疾患 |
後縦靱帯骨化症 |
脊髄小脳変性症 |
脊柱管狭窄症 |
多系統萎縮症 |
骨折を伴う骨粗鬆症 |
糖尿病の合併症 |
早老症 |
閉塞性動脈硬化症 |
がん末期 |
介護費用の負担
介護サービスを利用した場合、利用者(被保険者)の自己負担は、原則1割です。残りの9割について、その50%を公費で、50%を第1号被保険者と第2号被保険者により支払われる保険料でまかないます。
介護保険料
介護保険料については、第1号被保険者と第2号被保険者の1人当たりの負担額が同じになるように、人口割合により3年毎に見直されます。2018~2020年度は、第1号被保険者と第2号被保険者の保険料負担割合は、それぞれ23%、27%となっています。
第1号被保険者の介護保険料
第1号被保険者の保険料は、上述の3年毎の見直しを受けて、市町村ごとに条例で決められた基準額をもとに、本人や世帯の所得などにより段階的に設定されています。標準の段階設定は9段階ですが、条例で弾力的に決めることができます(段階が多いほど負担能力に応じた保険料設定といえます)。
所得段階別保険料の算定方法(第1号被保険者) |
||
段階 |
対象者 |
保険料の |
第1 |
生活保護受給者等 |
基準額×0.3 |
第2 |
世帯全員が市町村税非課税かつ本人年金収入+合計所得金額80万円以上120万円以下 |
基準額×0.5 |
第3 |
世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入+合計所得金額120万円超 |
基準額×0.7 |
第4 |
本人が市町村民税非課税(世帯に課税者がいる)かつ、本人年金収入+合計所得金額80万円以下 |
基準額×0.9 |
第5 |
本人が市町村民税非課税(世帯に課税者がいる)かつ本人年金+合計所得金額80万円超 |
基準額×1 |
第6 |
市町村民税課税かつ合計所得金額120万円未満 |
基準額×1.2 |
第7 |
市町村民税課税かつ合計所得金額120万円以上190万円未満 |
基準額×1.3 |
第8 |
市町村民税課税かつ合計所得金額190万円以上290万円未満 |
基準額×1.5 |
第9 |
市町村民税課税かつ合計所得金額290万円以上 |
基準額×1.7 |
- 課税年金収入には、障害年金・遺族年金・老齢福祉年金は含まず。合計所得額は、扶養控除や医療費控除などの所得控除や前年以前に発生した繰越損失を控除する前の金額。
厚生労働省資料をもとに作成
介護保険料が市町村ごとに異なるのは、その市町村に介護保険を利用する人がどのくらいいるか、またどんなサービスの需要が多いかなどによって、市町村の介護サービスにかかる総費用が異なるためです。
第1号被保険者の全国平均の保険料の推移等 |
|||||||
第1期 |
第2期 |
第3期 |
第4期 |
第5期 |
第6期 |
第7期 |
予想 |
2000年度~ |
2003年度~ |
2006年度~ |
2009年度~ |
2012年度~ |
2015年度~ |
2018年度~ |
2040年度 |
2,091円 |
3,293円 |
4,090円 |
4,160円 |
4,972円 |
5,514円 |
5,869円 |
約9,200円 |
厚生労働省資料をもとに作成
第2号被保険者の介護保険料
第2号被保険者の保険料は、加入する医療保険(健保組合、全国健康保険協会、市町村国保など)によって異なります。
職場の「健康保険」に加入している人
介護保険料は、医療保険ごとに設定されている介護保険料率と給与等で決まり、事業主と被保険者で半分ずつ負担します。例えば、協会けんぽの介護保険料率は毎年度見直しを行うこととなっており、2018年度については1.57%です。なお、40歳から65歳未満の被扶養者の介護保険料は、被保険者が支払う介護保険料でまかなわれるので、個別に介護保険料の負担はありません。
地域の「国民健康保険」に加入している人
市町村が保険者となる国民健康保険(以下、国保)の介護保険料は、国保加入者の所得や資産、人数などに応じて世帯単位で決まります。組み合わせ及び各項目の金額・割合(%)は、各市町村が決めます。
ところで、国保には扶養の概念がありません。したがって、世帯主が国保の加入者でなくても、世帯の中に40歳以上65歳未満の国保加入者がいれば、その人の介護保険料は世帯主が負担します。
医師、歯科医師、薬剤師、理容美容業、建設業などが加入する「国民健康保険組合」に加入している人
介護保険料は規約で決まります。
介護保険料の納付方法
第1号被保険者の介護保険料の納付方法
介護保険の保険料の納付方法は、年金額(老齢・遺族・障害年金を含む)により次のように異なります。
年金額が18万円以上の人
年金から天引き(特別徴収)されます。
年金額が18万円未満の人など
金融機関・コンビニエンスストア等での納付書払い・口座振替(普通徴収)で納付します。
なお、次の場合には、届いた納付書でのみ納付可能です。
- 年度の途中で65歳になった場合
- 年度の途中で市町村に転入した場合
- 年度の保険料段階区分が変更になった場合
- 4月1日時点で年金を受けていなかった場合
第2号被保険者の介護保険料の納付方法
加入する医療保険(健保組合、全国健康保険協会、市町村国保など)の保険料と合わせて保険者に納付します。
介護保険で受けられるサービス
要介護認定されると、介護保険で以下のようなサービスが受けられます。
(1)居宅介護支援
ケアプランの作成、家族の相談対応など
(2)自宅に住む人のためのサービス(居宅サービス)
<訪問型サービス>
- 訪問介護
- 生活援助(掃除や洗濯、買い物や調理など)
- 身体介護(入浴や排せつのお世話)
- 訪問看護(医師の指示のもと、看護師が健康チェックや、療養上の世話など)
- 訪問入浴介護(自宅に浴槽を持ち込み入浴介助を受ける)
- 訪問リハビリテーション(リハビリの専門家に訪問してもらい、自宅でリハビリを受ける)
- 居宅療養管理指導(医師、歯科医師、薬剤師、栄養士などに訪問してもらい、療養上の管理・指導を受ける)
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(24時間対応型の訪問介護・訪問看護サービス)
<通所型サービス>
- デイサービス(食事や入浴などの支援や、心身の機能を維持・向上するためのリハビリやレク、「おいしく、楽しく、安全に食べる」ための、口腔清掃や口唇・舌の機能訓練などを日帰りで行う)
- デイケア(施設や病院などで、日常生活の自立のために理学療法士、作業療法士などがリハビリを行う)
- 認知症対応型通所介護(認知症と診断された高齢者が利用するデイサービス)
<短期滞在型サービス>
- ショートステイ(施設などに短期間宿泊して、食事や入浴などの支援や、心身の機能を維持・向上するためのリハビリの支援など。家族の介護負担軽減や施設入居準備などに利用できる)
(3)施設に入居するサービス(施設サービス)
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護療養型医療施設(療養病床 ※「介護医療院」に順次転換予定。)
(4)福祉用具に関するサービス
- 介護ベッド、車イスなどのレンタル
- 入浴・排せつ関係の福祉用具の購入費の助成(年間10万円が上限で、その1~3割を自己負担することで購入できる)
(5)住宅改修
- 手すり、バリアフリー、和式トイレを洋式にといった工事費用に補助金が支給される。最大20万円まで。利用者はその1割~3割を負担。
また、有料老人ホームで、自治体から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けているところは、介護サービスに介護保険が適用されます。月額の費用もサービス内容もさまざまですので、よく調べてから利用するようにしてください。
他に地域密着型サービスというものもあります。
要介護認定の申請方法
介護保険サービスを利用するには要支援・要介護認定が必要です。まずはお住まいの市区町村の介護保険担当窓口で申請することから始めます。
役所の窓口で日程調整をし、役所から任命された認定調査員が自宅に来てご本人に日常生活の状況を伺い、身体機能のチェックを行います。その後、認定結果が出るまでに1か月程度を要します。
要介護認定が出たら、要支援が出た場合は、地域包括支援センターに相談、要介護が出た場合は、ケアマネジャーに相談します。
要介護の方は、自治体から地域で活動しているケアマネジャーのリストをもらえますので、その中から、自宅との距離などを考えて、何人か連絡をしてみましょう。良さそうな人がいたら、自宅に来てもらい困っている点を相談します。
初めはよくわからないと思いますので、一度ケアマネジャーとお会いして、生活する上でどういった点で困っているのかを相談してみましょう。
雰囲気や利用者との相性などをみて、別のケアマネジャーに変更することもできます。話しやすく親身になってくれるケアマネジャーを探しましょう。
ケアマネジャーは介護の計画書である「ケアプラン」を本人や家族の希望を聞きながら作成します。さらに、本人だけではなく、介護されているご家族の相談も聞いてくれます。
今後、日ごろの介護の大変さを相談することもありますから、話しやすい方を探しておくと先々心の負担が軽くなるかもしれません。相性のいい人を探しましょう。
ケアプランが決まると、それに基づいてサービスが受けられます。
要支援の方は、お住まいの住所を担当している地域包括支援センターへ相談することで、上記の流れに沿って、相談を受け付けてくれますので、相談してみましょう。
どこの地域包括支援センターに連絡すればよいか、わからない場合には、市区町村役場の介護保険担当窓口へ聞いてみましょう。