身近にある介護
2020.3.3
『愛、アムール』
◆Movie Infomation◆
■作品名:愛、アムール
■販売元: KADOKAWA / 角川書店
■日本公開年:2013年
■発売日: 2014年6月27日
■製作国:フランス・ドイツ・オーストリア
■配給: ロングライド
■上映時間:127分
■監督・脚本:ミヒャエル・ハネケ
■製作:マーガレット・メネゴーズ(パリ)、シュテファン・アルント(ベルリン)、ファイト・ハイデュシュカ、ミヒャエル・カッツ(ウィーン)
■出演:ジャン=ルイ・トランティニャン、エマニュエル・リヴァ、イザベル・ユペール、アレクサンドル・タロー
老夫婦が選んだ愛の行く末
ひと組の夫婦の老境と、その愛の行く末を描いた問題作品。ミヒャエル・ハネケ監督はこの作品で、2年連続となるカンヌ最高賞を獲得。
パリの高級アパルトマンで悠々自適の老後を送る音楽家夫婦、ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・リヴァ)。満ち足りた夫妻の日々は、ある日、アンヌの発病で暗転する。入院を拒む妻の願いを聞き入れ、在宅介護で献身的に支えるジョルジュ。だが、アンヌの病状は確実に悪化し、心身は徐々に普通の状態から遠ざかっていく。その中で、娘とも対立し、看護師やヘルパーを信用することができず、二人は次第に孤立していく……
この作品で描かれているのは、映画の中のストーリーを超えた、老老介護のリアリズムだ。周囲が手を差し伸べようとしても、自ら孤立し閉ざされていく二人だけの世界。それこそが至高の愛の姿だとして、ただ尊厳をもって見守っていくしかないのだろうか。
介護の仕事をしている人にとっては、この二人だけの世界をただ美しくせつない愛の物語として受け止めることは、決して出来ないだろう。たとえ拒絶されようと、自分だったらなんとか関わりをもつことが出来たのではないか。そんな自問しながら観てしまうだろう。映画の中には答えはないかもしれないけれど、同じ介護の仕事をする仲間と観ながらディスカッションをして、現実の仕事に活かすこともできるのではないか。
第65回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞のほか、第85回米国アカデミー賞外国語映画賞ほか、51の映画賞を受賞した話題作。
<中条>
関連記事