身近にある介護
2020.2.3
『老人Z』
◆Movie Infomation◆
■作品名:老人Z
■販売元: アニプレックス
■公開年:1991年
■発売日: 2005年4月13日
■製作国:日本
■上映時間:80分
■原作・脚本・メカニックデザイン:大友克洋
■キャラクター・デザイン:江口寿史
■監督:北久保弘之
■制作:A.P.P.P
■製作・著作:東京テアトル、角川書店、ムービック、テレビ朝日、アニプレックス
■キャスト:松村彦次郎、横山智佐、小川真司、近石真介
SFアニメの巨匠が描く老人問題
老人介護問題が深刻化する社会状況を、今から20年以上前に先見性をもって描いていた画期的な劇場アニメーション。原作・脚本・メカニックデザインの担当は、『AKIRA』や『スチームボーイ』で知られる漫画家、そしてアニメーション監督としても世界的な評価を得ている大友克洋。
看護学生の三橋晴子がボランティアで世話をしている寝たきりの高沢老人が、ある日突然、厚生省の高齢化社会新事業『Zプロジェクト』の実験台となってしまう。超小型原子炉で稼働する全自動看護ベッド『Z-001号機』は、食事、入浴、排泄処理はいうまでもなく、テレビなどの娯楽装置まで完備した画期的マシーンで、独居老人が快適な生活を過ごせるように開発されたプロジェクトと謳われていた。だがベッドにつながれた高沢老人は、コンピュータを通して晴子に助けを求めてくる。晴子が高沢老人を救いだすために仲間たちと画策するのだが、そのなかで老人を幸せにするというこのプロジェクトの裏にある、とんでもない陰謀が暴かれていく――
この作品は、一見すると荒唐無稽なSF娯楽アニメーションだが、介護問題の中で一番大切なテーマとなる「人間愛」が、しっかりと描かれている。この不朽のテーマがあるがゆえに、20年以上前のこの作品からは古臭さはまったく感じられないが、一方で現在の介護の問題が、根本的には20年前とあまり変化してないということも、同時に物語っているようにも感じられる。
またこの映画では、介護が必要で無力な老人を描く一方で、入院しながらも元気いっぱいコンピュータを操って介護ロボットと攻防戦を繰り広げる「おじいちゃん軍団」も描かれている。老いぼれたように見える老人たちだが、実はすべてお見通しで、実はまだまだ頼れる存在の人々——そんな視点も忘れさせない作品となっている。
<中条>
関連記事