《24年度介護報酬改定》在宅主要サービスを検討

   

 

厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)で、次期改定に向けた各サービスの審議が進んでいる。
7月10日には通所系、短期入所系サービス、24日には訪問系サービスなど、在宅の主要サービスについて検討を行った。

通所介護では、大規模ほど基本報酬が下がる仕組みの是正を求める声が相次いだ。
また訪問リハでは、老健や医療院のみなし指定での実施が委員から要望された。
各サービスの検討のポイントをまとめた。

通所介護

現行、通所介護の基本報酬は利用者数に応じて(1)通常規模型(2)大規模型(Ⅰ)(3)大規模型(Ⅱ)――の3段階。
スケールメリットの観点から大規模事業所ほど報酬が低く設定されている。

例えば要介護3、7~8時間未満で1日あたりの報酬は通常規模型896単位。
これに対し大規模型(Ⅰ)は857単位で通常規模より4.4%低く、大規模型(Ⅱ)は826単位で7.8%低い。
全国老人保健施設協会会長の東憲太郎委員は「大規模ほど専門職の配置が充実し、重度者の受入れを積極的に行っている事業所もある。一律の減算はなくすべき」と主張。他にも見直しを求める意見が相次いだ。

算定伸びない入浴介助(Ⅱ)

21年報酬改定で入浴介助加算は1日50単位から40単位に減算。
代わりに、医師等が居宅で浴室環境や入浴動作を評価し個別入浴計画を作成・実施した場合の上位加算(Ⅱ・55単位)を新設しメリハリをつけた。

今年3月実績で、加算(Ⅰ)は事業所ベースで通所介護の9割以上、地域密着型通所介護の7割以上で算定するも、加算(Ⅱ)はともに1割前後。
これについて日本医師会常任理事・江澤和彦委員は「個浴支援には相応のスキルが必要。事業所での研修体制を充実させなくてはならない」と指摘した。

また、「通所介護では特殊浴槽を導入し、中重度者の入浴支援を果たしているところも多い。加算(Ⅱ)がなじまない」(民間介護事業推進委員会代表委員・稲葉雅之委員)など加算(Ⅰ)の重要性を訴え、報酬の再考を求める声も複数あがった。

看多機への統合検討か

地域密着型通所介護の一類型である療養通所介護は、21年4月審査分で利用者761人、うち要介護3~5が9割近くを占める。
サービス開設主体の8割以上が訪問看護を運営する。

21年改定の審議報告では療養通所について「看多機の機能や役割を踏まえつつ、今後の在り方について検討すべき」と明記。
昨年末の介護保険部会の取りまとめでは▽看多機のさらなる普及に加え、例えば複数の在宅サービスを組合せた新たな複合型 ▽機能が類似・重複するサービスの将来的な統合・整理――を検討するとされ、看多機との統合を議論する可能性も出ている。

通所リハビリ:リハ・口腔・栄養の一体実施

論点の一つ「リハビリ・口腔・栄養の一体的な実施の推進」については、21年改定時に同省が「一体的計画書」の様式を策定したが、使用している通所リハ事業所は21年度時点で27.2%と低調。
「別の書式を使用」「活用を促す加算がない」「各職種での書類の共有が難しい」などが主な理由だった。

江澤委員は「通所系で口腔・栄養関連加算の算定が伸びないのは専門職がいないから。リハビリテーションマネジメント加算に管理栄養士や歯科医師が関与するしくみを設けてはどうか」と、ADL改善の効果も出ている同加算の拡充を提案した。

短期入所療養介護:「総合医学管理加算」低調

21年度改定で新設された総合医学管理加算(1日275単位、7日まで)は投薬、検査、注射、処置等を目的に、ケアプランで計画していない短期療養を行った場合に算定。
老健における医療ニーズ受入れ、在宅療養支援を評価する加算だ。

しかし、22年10月で事業所ベースでの算定率はわずか0.5%。肺炎、認知症、骨粗鬆症、尿路感染症が比較的多い。
また、医療機関への調査では、同加算の認知度は概ね3割程度だった。

東委員は「区分支給限度額を理由に、利用控えも起きている。ショート利用中には他の加算も算定する」と述べ、同加算を限度額の対象から外すことを要望した。

訪問介護:看取り期の対応強化

直近1年間で看取り期の対応をした訪問介護事業者は39.8%。6割では提供実績がなかった。
訪問介護事業所へ看取り期の対応を聞いたところ、「事業所外の訪問看護師と連携できる体制を取っている」が最多(38.4%)だった。
看取り期も含めて多職種との連携を進める方向での議論が必要」などの意見があった。

訪問看護:退院当日の評価拡充

入院・入所中の利用者に対し、主治医等と連携して在宅生活での必要な指導などを行う退院時共同支援加算の算定件数が大幅に減少している。
19年度46.1%だった算定割合が昨年度には18.4%まで落ち込んだ。コロナ禍による退院前カンファレンス開催の減少が要因だ。
厚労省によると、退院前共同指導が行われない代わりに、退院日当日に訪問看護師が訪問に訪れるケースが増えている。
日本看護協会常任理事の田母神裕美委員は、「コロナ禍で、退院日に訪問して丁寧にケアを行っている実態がある」とし、退院日訪問の評価の充実を求めた。

訪問リハビリ:老健・医療院のみなし指定求める

昨年度に実施された「地域における高齢者リハビリテーションの推進に関する検討会」では、今後の課題として医療機関や老健、医療院による訪問リハの拡充が挙げられている。
老健で訪問リハを提供している割合は全体の3割に満たず、この理由について、東委員は「訪問リハ事業は、医療機関はみなし指定で始められるのに対して、老健や医療院ではできない。これが高いハードルになっている」と指摘。「老健などでもみなし指定で取り組めるようにすべきだ」と主張した。
一方で、地方分権提案では、医師の必置要件の緩和を求める意見が挙がっているが、それに対しては反対の姿勢をみせた。

居宅介護支援・介護予防支援:予防支援の報酬アップを要望

今国会で成立した改正介護保険法で、来年4月から介護予防支援の指定対象が地域包括支援センターに加えて居宅介護支援事業所にも拡大される。
全国老人福祉施設協議会参与の古谷忠之委員は「対象拡大にあわせて、適切な報酬の設定をお願いしたい」と求めた。
居宅介護支援(要介護1・2)の基本報酬1,076単位に対し、介護予防支援は438単位。
基本報酬がアップしなければ、対象を拡大しても指定に手を挙げる事業所が増えないとの見方も多い。

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