24年度報酬改定 プラス1.59で決着 1月に新報酬案

 

2024年度介護報酬改定の改定率はプラス1.59%で決着した。

12月20日に行われた武見敬三厚生労働大臣、鈴木俊一財務大臣の予算編成の折衝の中で決まった。24年度は医療、介護、障害福祉のトリプル改定で、診療報酬はプラス0.88%(薬価はマイナス1.00%)、障害福祉サービス等報酬はプラス1.12%となった。

介護報酬の改定率が診療報酬を上回るのは初めて。

ICT活用など生産性向上に先進的に取り組む特定施設の人員基準は3.3対1を上限に特例的な緩和を認め、介護予防支援は居宅介護支援事業所が直接指定を受けて提供する場合の報酬区分が創設される。

処遇改善分は2年分

今回の介護報酬改定では、水熱光費の高騰への対応や他産業と遜色ない賃上げの原資として、介護事業者団体が団結し、大幅な報酬増を主張してきた。

プラス1.59%という数字について、武見大臣は折衝後の記者会見で「公定価格で仕切られているこの分野で、適切な賃上げ分をしっかりと確保する、それを実現することが大きな課題だった。

それに加えて、物価高騰への対応を省内の各部門で調整し、財務省と厳しい折衝が行われた結果」とコメント。

「改定率の外枠として、処遇改善加算の一本化による賃上げ効果や、光熱水費の基準費用額アップによる施設の増収が見込まれ、これらを加えれば2.04%程度のプラスとなる。

実質的には2%台を確保できたとご理解いただきたい」と強調した。

また「医療、介護、障害福祉の現場で働く職員に対し、24年度に2.5%、25年度に2.0%のベースアップに確実に繋がるように、配分方法を工夫する」とも説明。

具体的な方法は今後検討する。

今回の改定で、処遇改善分は2年分を措置し、3年目の対応については、処遇改善の実施状況を踏まえながら26年度の予算編成過程で検討を行うとした。

改定率が決まり、今後は各サービスの基本報酬や加算への配分に注目が集まる。

新単価は今月中にも示される見込み。

改定施行日は4月1日だが、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導は6月1日となる。

診療報酬では今回の改定から6月施行(薬価は4月)に後ろ倒しされたことを受け、特に診療報酬と関連する4サービスのみ改定時期をあわせた。

「先進的」特定施設の3.3対1緩和

「生産性向上に先進的に取り組む」特定施設については特例的に人員基準を緩和する。

政府の規制改革会議で提案され、大手のSOMPOケアなどが実証事業に参画する一方、緩和による報酬減などに懸念を示す声も多く挙がるなど、注目の論点だった。

特例の基準は「利用者数が3(要支援者の場合は10)ごとに0.9以上であること」。

従来の3対1に対し、3.3対1の配置となる。特例基準の適用には申請が必要。

申請前には3カ月以上の試行期間を設け、実際に負担軽減やサービスの質に影響していないかを確認しなければならない。

具体的には、テクノロジーの活用や職員間の適切な役割分担の取組みを最低3カ月以上試行(試行期間中は通常の人員基準を遵守)し、実際にケアなどを行う多職種の職員が参画する委員会で安全対策や介護サービスの質の確保職員の負担軽減が行われていることをデータ(業務時間の短縮、利用者の満足度、職員の心理的負担など)で確認。

当該データを指定権者へ提出する。試行結果として、指定権者に届け出た人員配置を限度に運用する。

届け出より少ない人員配置を行う場合には、改めて試行を行い、届出が必要になる。

適用後も、一定期間ごとに負担軽減やサービスの質確保についてのデータを指定権者へ報告する。

期中に特養など拡大も

大臣折衝では、この緩和について、「エビデンスが確認された場合には、特養などその他の施設にも第9期中に広げる」ことを両大臣で確認した。

具体的には、「その他の介護施設(特別養護老人ホーム等)についても、今後の実証事業によって、介護付き有料老人ホームと同様に、人員配置基準の特例的な柔軟化が可能であるエビデンスが確認された場合は、期中でも、人員配置基準の特例的な柔軟化を行う方向で、更なる見直しをする」としている。

介護予防支援の報酬は2区分に

昨年成立した改正介護保険法で、来年度から地域包括支援センター以外に、居宅介護支援事業者も市町村の指定を受けて介護予防支援を実施できるようになる。

これを受けて、居宅介護支援事業所が指定を受けて直接、介護予防支援を提供する場合の報酬区分が新設される。

地域包括支援センターが提供する場合と、包括からの委託ではなく居宅介護支援が直接提供する場合とで報酬が分かれることになる。

居宅介護支援事業所が指定を受けた場合、「市町村長に対し、介護予防サービス計画の実施状況等に関して情報提供することを運営基準上義務付けることに伴う手間やコストについて評価する新たな区分を設ける」としており、包括よりも高い報酬が設定されるとみられ、今後の単価公表が注目される。

居宅介護支援事業所は、現行の体制で介護予防支援事業所の指定を受けられ、包括のように3職種の配置などは不要。

管理者は主任ケアマネジャーとし、他事業所との兼務も認める。

居宅介護支援と同様、特別地域加算、中山間地域等における小規模事業所加算、中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算の対象とした。

「訪問+通所」の新複合型は見送り

今改定の目玉の一つとされていた複合型サービスの新類型は創設を見送る。

訪問介護と通所介護を組み合わせた新類型は、「定員29人以下」「ケアマネは外付け」などのイメージが示されていたが、委員からは「規制緩和でよいのではないか」「地域密着型サービスとすることにより利用がしにくくなる」「制度の煩雑化につながる」などの否定的な意見も多く挙がっていた。

ただし、審議報告では、「より効果的・効率的なサービスのあり方について実証的な事業やその影響の分析などを実施し、規制緩和や職員養成の観点、事務の効率化や組み合わせるサービスの種類、集合住宅へのサービス提供のあり方など含め、引き続き総合的に検討していくべき」とし、今後も検討を続ける考えだ。

 

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