ベア加算後の介護職員 月給1.7万円増【これからの介護保険】

厚生労働省は6月28日の社会保障審議会介護給付費分科会で2022年度の介護従事者処遇状況等調査の結果を報告、了承された。
22年10月の臨時報酬改定で新設された介護職員等ベースアップ等支援加算の算定前後で介護職員の月給は月1万7,490円増加。「一定の政策効果があった」と同省はコメントした。

委員からは全産業と比較したさらなる処遇改善や、手続きの簡素化など取得促進に向けた課題も提起された。
24年改定に向け同分科会で検討を行う。

ベア加算後の介護職員 月給1.7万円増

介護職員等ベースアップ等支援加算(ベア加算)は、介護職員1人あたりの収入を3%程度(月平均9,000円相当)引上げるための加算。
22年2~9月に実施した介護職員処遇改善等補助金を引き継ぐ形で同年10月に創設された。

主な算定要件は(1)賃金改善に要する費用の見込額の3分の2以上を基本給または毎月決まって支給される手当に充てる(2)介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを取得――など。
事業所の判断で介護職員以外の賃金改善に充ててもよい。

今回の処遇状況等調査は、補助金・加算の取得前(21年12月)、補助金取得後(22年9月)、加算取得後(22年12月)の給与等を比較した。

介護職員(月給・常勤)の平均給与額(一時金含む)は補助金取得事業所が31万7,540円ベア加算取得事業所が31万8,230円
それぞれ取得前と比べ1万6,550円(5.4%)、1万7,490円(5.8%)アップした。

「手当新設」6割以上

加算取得事業所のベースアップ等の実施方法で最も多かったのは「毎月支給される各種手当の新設」(65.9%)。
これに対し「給与表を改定し賃金水準を引上げ」は15.8%、「定期昇給を実施」は14.4%と、基本給より手当等での賃金改善が主体となっている。

介護職種以外への対応については、半数弱の事業所が生活相談員支援相談員看護職員へ配分。ケアマネジャーへ配分した事業所は3割程度だった。具体的な配分金額の割合は同調査では得られていない。

加算取得事業所で職種別の平均給与額を比較すると、看護職員37万2,970円(取得前より1万8,180円、5.1%増)、生活相談員・支援相談員34万2,810円(1万6,170円、4.9%増)、リハビリ3職種・機能訓練指導員35万5,060円(1万2,320円、3.6%増)、ケアマネジャー36万2,700円(1万4,750円、4.2%増)と、介護職員と同水準の賃金改善が行われている。

加算等の効果について委員からは概ね評価が得られ、調査内容は了承。
同時に、加算の取得促進や加算等を通じたさらなる人材確保・定着策に関する意見が集まり、同省は24年改定に向け、人材確保等のテーマの中で検討していくとした。

日本介護支援専門員協会の濵田和則副会長は「他産業では大幅な賃上げの動きがある。介護から人材が流出しないよう積極的な処遇改善を進める必要がある」と強調。現行は加算対象外の居宅介護支援事業所での処遇改善についても対策を求めた。
日本労働組合総連合会の小林司氏は「来年度以降も継続的な賃上げが行われるよう、手当等ではなく賃金テーブルの改善につながるしくみが必要だ」と述べた。

また、今回の調査対象でベア加算の未算定事業所の割合は8.7%。
未算定の理由は「賃金改善の仕組みを設けるための事務作業が煩雑」(40.0%)、「計画書や実績報告書の作成が煩雑」(35.7%)など、事務負担に関するものが多く、「処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベア加算を一本化すべき」との提案も複数の委員からあがった。

 

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